テーマ:創作物語

スイカの味

ショートストーリーです。      「スイカの味」 蒸し暑い夏の夕刻、市ヶ谷 天然理心流 試衛館の勝手の間で 土方歳三と沖田総司が向かい合って、胡麻を摺っていた。 すりこ木を扱うのが土方。大すり鉢を抑えるのが沖田。 家伝薬を売るついでに、土方が地元の日野宿から大量に青菜を運んできたのだ。 胡麻和えを作り、食客たち…
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「カニ鍋の夜」 (四・終)

これを見た竜馬は膝を打った。 竜馬:「おおっ、双方刃を交えずして勝負ありとは、     剣聖の神髄を見たるがごとく。沖田君の潔さもあっぱれじゃ。     わしゃこの勝負引き分けとみた。どうじゃ、西郷さん」 西郷:「坂本どんの言うとおりでごあんす。     いやいや眼福ものでござる」 二人は「眼福、眼福」と繰り返し、頷…
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「カニ鍋の夜」 (三)

海舟:「美男子どころか、近頃じゃヒラメ顔だったという説が主流のようだね」 にやりとして海舟が言った。 竜馬:「うーん、ヒラメねえ。そうかのう、どっちかちゅうたらカレイに似ているっちゃ」 一同シーンとなって沖田の顔をまじまじと見る。 沖田:「こ、こんなに見つめられるということは     私は男にも惚れられると…
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「カニ鍋の夜」 (二)

なんとなく座が浮き立たなかった。 ここ試衛館は普請が滞り、隙間風が多い。 西郷は寒気を逃れる為に焼酎を茶碗でぐいぐいやり、 酔った目で対面の近藤を見つめて感心したように言った。 西郷:「こう目の前で見ると、カニにかぶりつく近藤さんの顔は実に無骨でごあんすな」 西郷は冗談で場をなごませるつもりだったのだが、、 すかさず龍馬…
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「カニ鍋の夜」 (一)

今さらなんですけど、2003年の旧作です。 季節が頃合なので引っ張り出しました。 バカバカしいので、お聞き流しのほどを。 正月も過ぎ、初めての満月の夜である。 かねてより約束された「鍋を囲む会」があの世柳町の近藤勇の試衛館で開かれた。 今夜の鍋奉行は土方歳三。 近藤が招待したのは、勝海舟、西郷隆盛、坂本竜馬という大物たち…
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「赤とんぼ」(六)終

秋の日は落ちるのが早い。 騒ぎが静まった大通りには夕日に染まった赤とんぼの群れ。 「またな」子供たちもそれぞれ帰ってゆく。 沖田:先生、お蔭さまで思わぬ実入りになりました。     これでとうぶん米に困りません。 山岡:なにね、共に上洛した間柄だ。 沖田:あらためて御礼に伺いますが、今日は栗を持っていってください。  …
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「赤とんぼ」(五)

この反響に3人は大得意。 3回戦を前にシコを踏んでいると、 「どいた どいたぁ、道をあけろい」 人垣を押しのけて現れたのは本物の相撲取りたち。それぞれ手に八角棒を持っている。 本場所をひかえた小野川部屋の一団だ。 大関:誰のゆるしで相撲を取っているんじゃい? 小野川部屋とは大坂で喧嘩して、のちに新選組が興行を開い…
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「赤とんぼ」(四)

実は山岡の道場も試衛館の経営難と似たりよったり。 元来衣食住に無頓着のところへ、山岡の気前のよさ。 この世でも相変わらず借金の依頼者が列をなしている。 面倒見のよさも近藤に似かよっている。 山岡:しかし、俺が買うと言ったからには、買うのだ。    だが金は、今すぐにというわけにはいかん。 沖田:困ったなぁ。まるで近藤先生…
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「赤とんぼ」(三)

物色するまでもなく、相応の男が向こうの店をブラついている。 背が高く筋骨たくましい後ろ姿。原田は早速舌なめずりで近づく。が、 ほどなく腕をねじあげられ、片耳をつかまれると、ずんずん引っ張られてしまった。 かなり剛力の男だ。 原田:いててて、お放しください、山岡先生。 山岡先生とは、この近くに住む山岡鉄舟。浪士組が上洛し…
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「赤とんぼ」(二)

沖田:にしたって今日は売れないなぁ。といって米は買いたいし。 原田:通りの向こうじゃ、「新徴組」のやつらが「新徴栗」を始めたが、     駄目だね。おれらの真似をしたってな、     人気の度合いが違うっての。 沖田:そういえば、あっちのほうでは「彰義隊栗」も出ていたな。 原田:まいるね、便乗されると。第一「彰義隊栗」って…
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「赤とんぼ」(一)

ここはあの世番外地、四谷大通り。 沿道には出店が並び、いつもなら買い物客で賑わうのだが、 今日は客足が少ない。ちょうど神楽坂の毘沙門天の縁日で、 人出はそちらへと流れ、大通りは威勢のいい兄いの荷車を引く声だけが目立って響く。 沖田:あれ?左之さん、ちっとも売れてないじゃないか。 屋台にごっそり積まれた栗。原田左之助…
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「栗むけば清河」(五)

沖田;栗の御礼と言ってはなんですが、どうでしょう近藤先生、    ほかの刀剣好きの人をご紹介しては? 近藤:ふむ、思い当たる御仁がいたっけか? 沖田:いますよ、います。 そこで沖田は息を吸い込んでから、ゆっくりと。 沖田:た、け、だ先生。 土方:お、総司、よくぞ思いついたな。そう、武田観柳斎。 言ったとたんに土…
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「栗むけば清河」(四)

驚いたのは土方。我に戻って眉を上下させながら、 土方:買うって、おめえ、いってぇ全部で何両になるか、     いいからかんをこくでねぇ。 多摩弁丸出しでせきこんだ。 近藤:こきゃぁがれ。いったん買うと言ったら、買うのだ、おれは! 土方:出て行った妻子が恋しくはないのか?どうするんだよこの先、え? 荒々しく近藤…
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「栗むけば清河」(三)

すぅーっと近藤、土方の目も吸い寄せられるように刃に向けられる。 清河が刀身を動かすたびに、3人の視線もつられて動く。 気に入ればいくらでも欲しい。欲しいのだが、なにせ金がない。 沖田:はぁ~ 清河:なんだね?気のない声で。よく見てみなさい。 沖田:見えます、よく見えてます。 清河:君の刀の相州清光。あれは別名乞食清光とも…
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「栗むけば清河」(二)

一気に緊張が走る。尊皇攘夷の名のもとに浪士組を作った張本人だ。 京都で袂を分かって以来、もう2度と会うことはないと思っていた。 故郷の庄内にいると噂で聞いてはいたが・・ あわてて栗の殻を片付けているところへ、ぬっと清河は現れた。 座がしらけるといわれた陰気さはあの頃と変わりない。 清河:これは近藤先生、京都以来、お久しぶり…
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「栗むけば清河」(一)

ここは市谷柳町あの世番外地、天然理心流道場「試衛館」。 多摩への出稽古から帰館した近藤は、居間に入るなり仰天の声をあげた。 近藤:どうした?この栗は? 居間の中央に山と積まれた栗。栗の殻を剥いているのは、沖田。 隣で渋皮をむいているのが土方。うんざりの態で挨拶もそこそこ。 土方:どうもこうも、近藤さんが多摩へ出立し…
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