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zoom RSS 「カニ鍋の夜」 (二)

<<   作成日時 : 2017/01/15 17:13   >>

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なんとなく座が浮き立たなかった。画像
ここ試衛館は普請が滞り、隙間風が多い。
西郷は寒気を逃れる為に焼酎を茶碗でぐいぐいやり、
酔った目で対面の近藤を見つめて感心したように言った。

西郷:「こう目の前で見ると、カニにかぶりつく近藤さんの顔は実に無骨でごあんすな」
西郷は冗談で場をなごませるつもりだったのだが、、
すかさず龍馬のツッコミが入ってしまった
竜馬:「えらが張っとるからのう。そうそう、近藤さんの写真、あれは息が詰まりそうじゃ」

ぺっぺと殻を吐き出しながら竜馬は言った。画像
土方:「まるで三味線の四角い胴のようで味も素っ気もなく、
    女も寄り付かんとでも?」

カニの関節をバキリと折って土方が言った。目に凄みを見せている。

竜馬:「そ、そんなことまで言うとらんちゃ。まっこと撃剣家らしい顔だと言いたかったんじゃ・・」

土方の表情にあわてて、竜馬の歯切れは悪かった。
居ずまいを正し近藤が言った。

近藤:「勝先生、私の写真の顔は武士として認められましょうか?」

近藤は武士へのこだわりを捨てきれない。

海舟:「武張り過ぎておるな、あれは。撮られることを嬉しがっている田舎武士根性がみえみえだね。
    写す時、あんた息を止めただろう?」
近藤:「は、さよう。あの後で気を失った。命がけの撮影でしたな。ふはは」

近藤は正直に告白して顔を赤らめた。

西郷:「坂本どんの写真はかっこよか。遠くをまぶしげに見るあの目線の先に新しき世界が広がっとるようで、
    まさにあんたは風雲児じゃ」
海舟:「袴の下からブーツを見せて文明開化を予感させとる。
    あれはいい出来だね。銅像になるだけはある」
沖田:「お言葉ですが、ふところに銃をしのばせている小心ぶりが私は気に入らないな。画像
  せめて銃はこめかみに当てて欲しかった」
土方:「うん、よく言ったぞ、総司。髪の毛もそそけ立って
    まともに風呂にも入っとらんようだし、
    ブーツの中の足は水虫だね、絶対に」
竜馬:「ははは、土方さんこそあれを一年も履いていたのだから、さぞや両足ともやられたことじゃろ」
土方:「北海道は江戸とは違う。私は水虫が歩いているのを見たことがない。
    五稜郭の石の下にもいなかった」
近藤:「歳の写真はわれわれの誇りだ。武人としての魂魄がみなぎっておる。
    これほど軍服の似合う男はいないと世間の女どもを騒がしている」

玄関の衝立に大きく引き伸ばしたのを張って近藤は自慢していた。画像
西郷:「居酒屋にも張ってあるらしい」
坂本:「わいんにも張ってあるらしい」
海舟:「張ってなんでも儲けようってな魂胆さ」
土方:「だけど、勝先生の写真じゃ芋だって売れやしません。画像
    刀のこしらえまで自慢げで野暮の骨頂。 
    あれでは江戸の女は承知しませんぜ」 

容赦なくズケズケと土方は言った。

近藤「西郷先生の肖像画はだいぶ書き込みが過ぎてますな。
   たしか勝先生も本人と違うと言っておられましたな。 
   一部の変態を除いて、あれで女が騒ぐとは思えません」
西郷:「おいは写真が嫌いで撮らせなかった。
    沖田さんなども完全に時流に乗り遅れでごあんすな」画像
西郷は大きな音を立てて鼻をかんだ。

近藤「総司は先の人気を見込んでわざと撮らせなかったのだ」

苦し紛れの返答になった。

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